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思い出の断片をひろい集めて
子どものころ、誰しもが一度は「なぜか忘れられないもの」に出会ったことがあるのではないか。
たとえば、近所のおじさんがかけていたラジオの音、学校の帰り道で見かけた張り紙の絵、あるいは古本屋の店先で見つけたカビの匂いのする漫画。
中島友太の作品は、まさにそうした“なぜか心に残ってしまった断片”を一つずつ丁寧にすくい上げ、絵として編み直す行為である。
彼の出発点は、テレビに映る美空ひばりだった。
そこから昭和歌謡や古い映画、雑誌、落語へと興味はひろがり、それらはまるで記憶のアルバムのように彼の中にたまっていった。
そして、その断片たちはやがてデジタルとアナログを行き来しながら、彼の作品の「素材」となっていく。
「思い出」は、人によってはただの懐かしい記憶で終わる。
しかし中島はそれを、次に誰かの心に届く“イメージの種”として育て直す。まるで過去の断片をつなぐ「記憶のリサイクラー」のように。
コラージュのなかに棲む時間
中島の作品は、まずデジタルの中で始まる。
古本からスキャンした漫画の一コマ、ネットで拾った画像、過去に撮りためた写真。
そうした膨大なイメージの断片を、彼は自分の「琴線に触れた順」に並べ、デジタルコラージュをつくりあげる。
これが、彼にとっての“ラフ画”である。
だが、物語はここで終わらない。
彼はその下絵をもとに、キャンバスの上に絵の具で手を動かす。
アクリル、油彩、さまざまな画材が交差しながら、デジタルで仮組みされた時間がアナログの手作業で現実化されていくのだ。
コラージュの断片は、重なり合い、にじみ、混ざりあい、ときに新たな風景へと変貌する。
おもしろいのは、「完全に同じにはならない」ということだ。
デジタルの精密さに対し、キャンバスでは偶然の筆跡や色ムラが生まれる。
それは、あたかも計算ずくで組み立てたジオラマに、風が吹きぬけて葉っぱが一枚舞い落ちたような、一瞬のズレ。しかしそのズレこそが、彼の作品に命を吹き込んでいる。
中島は言う。「困ることはあまりない。バランスが崩れても、それもまた絵になる」。
彼にとって表現とは、コントロールするものではなく、時に自分でも意図しない“発見”と“出会う”ことなのだ。
キャンバスからはみ出した未来
あるとき彼は、キャンバスから木枠を外すという大胆な選択をした。
きっかけは「アトリエが狭くて保管できなかったから」という現実的な理由だったが、結果としてその作品は、まるで空間と呼応するような存在になった。
壁に直接貼られた布地は、奥行きを失った代わりに、自由を手に入れた。
このように中島の表現は、いつも「枠」を疑うことから始まる。
絵の枠、記憶の枠、時間の枠、そして“作品とはこうあるべきだ”という考えの枠。
それらを一度バラバラにして、再構築していく。「過去の自分の作品を再利用する」という行為も、そのひとつだ。
中島にとって制作とは、終わりのない“再構成のループ”なのだろう。
そのループのなかには、記憶、感情、文化の層が積み重なっている。
そして、その層を透かしてみると、たしかに「いま」が見えてくる。
つまり彼の作品は、ただ懐かしさを呼び起こすものではない。それは、過去を通して未来を考えるための「時間の顕微鏡」なのである。
最後に、ひとつだけ言葉を足したい。
中島友太の作品を手にすることは、忘れられた風景をもう一度、思い出す鍵を持つことかもしれない。
あなたの中に眠っていた記憶と、そっと再会するための。
Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
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